個人事業主がアルバイトを雇うには?必要手続きや注意点を解説

個人事業主はコア業務からルーティンワークまで、ひとりで幅広い業務を行う必要があります。

そのため「請求書発行などのルーティンワークを誰かに丸投げしたい」「繁忙期だけサポートが欲しい」と感じることも多いのではないでしょうか。

個人事業主本人でもアルバイトを雇用すればコア業務に集中でき、業務効率化が図れます。

しかし初めてアルバイトを雇う場合には「どんな手続きが必要なのか」など、わからないことが多いのではないでしょうか。

結論から言いますと、アルバイトを雇う際には、税務署や労働基準監督署にて「税務関係」「労働保険・社会保険関係」の手続きが必要です。

法律に沿って給与支払いや保険の手続きを行い、アルバイトに安心して働いてもらうためですね。

この記事では「個人事業主がアルバイトを雇う際に必要となる手続きや業務」「アルバイトを雇うメリット・デメリット」「雇用関連の手続きなく利用できる外注サービス」について解説していきます。

最後まで読んでいただければ、個人事業主がアルバイトを雇う際の疑問点が解決し、アルバイトを雇うより少ない労力で業務効率化を図る方法もわかります。

個人事業主がアルバイトを雇う際に必要な手続きは?

個人事業主がアルバイトを雇う際に必要となる手続きは以下のとおりです。

  • 労働条件の通知
  • 労働保険の手続き
  • 税務関連の手続き

それでは順に解説していきます。

労働条件通知書の作成

アルバイト(従業員)を雇う際には、アルバイトに対し労働条件の通知が必要です。

労働条件の通知は、労働基準法第15条に定められているからですね。

通常は「労働条件通知書」という書面を作成し、以下のような内容を記載して通知します。

  • 労働契約期間
  • 有期雇用の場合、労働契約の更新基準
  • 就業する場所
  • 業務内容
  • 始業・終業時刻
  • 時間外労働の有無
  • 休憩時間
  • 休日・休暇
  • 交代制勤務
  • 賃金の決定・計算・支払方法
  • 賃金の締め切り・支払い日
  • 昇給
  • 退職(解雇)について
  • 短時間労働者の場合、昇給の有無
  • 短時間労働者の場合、退職金の有無
  • 短時間労働者の場合、賞与の有無
  • 短時間労働者の場合、雇用管理改善等についての相談窓口

なおアルバイトを雇う際には労働条件通知書と合わせて雇用契約書も取り交わし、「労働条件通知書兼雇用契約書」として、雇用主とアルバイト双方が署名・捺印するのが一般的です。

雇用契約書の取り交わしは義務ではありませんが、トラブルを防ぐために作成するケースがほとんどです。

労働条件通知書兼雇用契約書のテンプレートを公開している社会保険労務士事務所などもあります。

作成方法がわからない方は、Googleで「労働条件通知書兼雇用契約書 テンプレート」と検索して、使い勝手な良さそうなものをダウンロードして使用していくのがてっとり早くておすすめです。

ひとつ注意点として、使用前に無断での利用がOKなのかの確認も忘れずに行っておきましょう。

労働保険の手続き

アルバイトを雇う場合には、労働保険の手続きも必要となります。

アルバイトを1人でも雇用したら、必ず労働保険(労災保険)に加入しなくてはいけないからです。

また要件を満たす場合には、雇用保険にも加入する必要があります。

保険 要件 手続き方法
労災保険 従業員を1人でも雇えば対象(短期でも対象) 雇用後10日以内に労働基準監督署で「労働保険関係成立届」を提出。
雇用後50日以内に労働基準監督署・都道府県労働局・金融機関のいずれかに「労働保険概算保険料申告書」を提出し、概算保険料を納付。
雇用保険 ・労働時間が20時間以上/週
・31日以上雇用
※農林水産業の一部は条件が異なる
雇用から10日以内にハローワークで「雇用保険適用事業所設置届」「雇用保険被保険者資格取得届」を提出。

最初に行う手続きは労働基準監督署での「労働保険関係成立届」提出となります。

手続きの方法については、『厚生労働省の労働保険の成立手続ページ』を参考にしてみてください。

なお社会保険(健康保険、厚生年金)については、常時雇用するアルバイトの数が5人未満の場合は任意加入です。

社会保険に加入する場合には、社会保険事務所で手続きしてください。

手続き方法については、『社会保険の手続き方法と必要書類~事業者はいつ何をすればいい?申請の流れを把握』の記事が参考になります。

それぞれの手続きには期限が定められていますので、漏れのないように手続きしましょう。

税務関連の手続き

アルバイトを雇う際には、税金関連の手続きも必要です。

アルバイトに支払う給料から、税金を源泉徴収する必要があるからですね。

具体的には以下の手続きを行います。

手続き 期限
税務署に「給与支払事務所等の開設届出書」を提出 初めてアルバイトを雇用してから1ヶ月以内
税務署・金融機関で「所得税徴収高計算書(納付書)」を添えて源泉徴収税額を納付 給与支払いの翌月10日までに
※従業員数が10人未満の場合には「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出して半年に1回に変更可能

また雇入れ時や給料支払い時とは別に、年末には「年末調整」が必要になりますので、忘れずに処理を行ってください。

年末調整について詳しく知りたい方は、『国税庁の年末調整がよくわかるページ』を参考にしてみてください。

開業と同時にアルバイトを雇う場合には、開業届提出時に「給与支払事務所等の開設届出書」も提出しましょう。

個人事業主がアルバイトを雇う際の注意点

個人事業主がアルバイトを雇う場合の注意点は以下のとおりです。

  • 法律を遵守した正確な手続きを行う
  • アルバイトを雇うための余裕をもつ
  • 退職リスクを減らせるよう工夫する

上記内容を順に解説していきます。

法律を遵守した正確な手続きを行う

まずは法律を遵守した正確な手続きを行うよう注意しましょう。

法律に違反してしまうと、罰金の対象になるからです。

またルールの無視や知識不足からの手続きミスや抜け漏れが出ると、アルバイトスタッフとの信頼関係が壊れてしまいかねません。

「自身がアルバイトの立場だったら」と考えてみると、やはり書類・手続き関係がきちんとしていて信頼できる雇用主の元で働きたいのではないでしょうか。

人を雇う際には、「労働条件の通知」「保険加入」「税務関連の処理」など、さまざまな手続きが必要です。

また法律が改正されれば、新しい法律に合わせた事務処理が必要となるため、「面倒」と感じる瞬間も出てくるでしょう。

しかしたとえ面倒でも手間がかかったとしても、ルールに対しての正確な理解と事務処理が必要です。

「自分では手続きできない」「手が回らない」と感じたら、税理士や社会保険労務士などの専門家への相談も検討してください。

アルバイトを雇うための余裕をもつ

「自身にアルバイトを雇い入れるための余裕があるか」も考えておきましょう。

給料を払う経済的な余裕についてはもちろん、『教育に割く時間』の面で余裕が無いと雇うのは難しいです。

十分に仕事を教えてもらえないと、雇われたアルバイト本人も「何のためにここにいるのか」と不満をもつでしょう。

任せたい業務の経験者を雇ったとしても、最初のうちは業務の進め方についての指導などが必要になるはずです。

またアルバイトを雇用すれば、雇入れ時の手続きに加え、給与計算・税務関係の事務処理などが増えます。

そのため、自身に「業務について指導する余裕があるか」「アルバイト雇用によって増える事務処理をこなせる余裕があるか」も確認しておくことをおすすめします。

退職リスクを減らせるよう工夫する

アルバイトを雇う際には、退職リスクを減らすための工夫も重要です。

採用したアルバイトがすぐに辞めてしまうと、「採用や教育へのコストがかかっただけ」になってしまうからですね。

また新しいアルバイトを募集する場合には、さらに採用コストがかかります。

早期退職リスクを減らすための工夫としては、以下のようなことが挙げられます。

  • 求人広告を具体的な内容で出して互いのミスマッチを防ぐ
  • 仕事のメリットもデメリットも客観的な視点から伝える
  • 給与と就業時間のバランスを考えて仕事内容を仕組み化する

人は「期待と現実が違う」と感じたときに退職したくなってしまうので、ギャップを埋めるためにも互いのすり合わせが必要となってきます。

とくに長期的に働いてくれるアルバイトを採用したい場合には、早期退職リスクを下げるための工夫やマニュアルの事前準備をおすすめします。

個人事業主がアルバイトを雇うメリット

個人事業主がアルバイトを雇うメリットは以下のとおりです。

  • 業務効率の向上
  • 繁忙期だけ人手を増やせる
  • 助成金を申請できる

詳しい理由について順に解説します。

業務効率が向上する

ひとつめのメリットとして「業務効率が向上する」ことが挙げられます。

アルバイトにノンコア業務・ルーティンワークを任せることで、個人事業主本人がコア業務に集中できるからですね。

コア業務とは利益に直結する業務のことをさします。

コア業務にかけられる時間が増えることで、売上アップや業務効率化によるコストダウンなども見込めるでしょう。

「日々の雑務に追われて本来の業務に集中できない」と悩んでいる人は、アルバイトの雇用を検討してみてはいかがでしょうか。

繁忙期だけ人手を増やせる

繁忙期だけ人手を増やせるのも、アルバイトを雇うメリットです。

アルバイトは正社員と違い、「1ヶ月だけ働いてほしい」などの募集ができるからですね。

短期の募集ができるのは、繁忙期がはっきりしている業種にとっては大きなメリットといえます。

また「出荷前の忙しい時間帯だけ」「お客さんの多い週末だけ」など、時間や曜日を限定した募集も可能です。

「繁忙期」「忙しい日時」だけ人手を増やせるので、無駄な経費をかけずに仕事を効率的に回せるようになるでしょう。

忙しい時期や時間帯が決まっている事業所・店舗にとっては、アルバイトは強い味方になるはずです。

雇用関係の助成金が申請できる

雇用関係の助成金を申請できるのも、アルバイトを雇うメリットです。

アルバイト雇用にあたり一定の条件を満たせば、助成金や税金の優遇が受けられるからですね。

例えば一定の条件のもとで「母子家庭の母」「高齢者」「被災離職者」などを雇用した場合には、「特定求職者雇用開発助成金」が受け取れます。

雇用関係の助成金にはさまざまなものがありますので、気になる方は厚生労働省の公式サイトやパンフレットで確認してください。

個人事業主がアルバイトを雇うデメリット

個人事業主がアルバイトを雇うデメリットは以下のとおりです。

  • 事務処理の増加
  • 採用コスト・経費の増加

上記理由について順に解説します。

アルバイトを雇うのに必要な事務処理が増える

アルバイトを雇うと、事業主として行わなければいけない事務処理は増えます。

アルバイトを雇うことで「勤怠管理」「給与計算」「保険加入」「税金に関する手続き」などが発生するからですね。

またアルバイトのマイナンバーを取得し、管理する業務もあります。

「業務が増えるので税理士や社会保険労務士に仕事を任せたい」「管理ソフトを導入したい」と考えた場合には、労力は減らせますがそのぶんの費用はかかってきます。

多少の費用はかかりますが、「free」のようなクラウド会計ソフトを導入は、かなり手間は省けるので、おすすめです。

アルバイトを雇うことによる人件費がかかる

人件費がかかるのも、アルバイトを雇うデメリットです。

給料を支払う必要があるのはもちろん、「雇用保険料」「労災保険料」などもかかってくるからですね。

社会保険に加入するなら、社会保険料の事業主負担分も必要になります。

また採用に至るまでも「求人誌に広告を出す」「バイト希望者の電話対応」「面接」などの費用と時間的コストもかかってきます。

「アルバイトを雇う際にかかる費用は給料だけではない」と認識しておきましょう。

個人事業主がアルバイトを雇う以外の選択肢

アルバイトの雇用には手間も費用もかかるため、「もっとラクに労働力を確保したい」と考える個人事業主の方も多いのではないでしょうか。

そこでこの章では、アルバイトを雇う以外の選択肢を3つ紹介します。

  • クラウドソーシングを使う
  • オンラインアシスタントを使う
  • 家族に協力してもらう

上記理由について順に解説します。

クラウドソーシングを使う

まずはクラウドソーシングを使う方法が挙げられます。

クラウドソーシングを通じてフリーランスに仕事を依頼する場合は雇用契約を結ばないため、雇用関係の手続きが減るからです。

またクラウドソーシングには以下のようなメリットもあります。

  • 即戦力を見つけられ、指導・教育の手間がない
  • 事務系からクリエイティブ系まで、さまざまなジャンルの仕事依頼が可能
  • 短期・長期依頼ともに可能
  • 秘密保持契約を結べる

繁忙期に合わせて即戦力を確保でき、雇用関係の面倒な手続きもないのがクラウドソーシングのメリットですね。

一方でクラウドソーシングには以下のようなデメリットもあります。

  • 経験が浅いフリーランスも登録している
  • 同じフリーランスにずっと依頼できるとは限らない

経験豊富なフリーランスに依頼するためには、依頼前に各フリーランスのプロフィールで「経歴」「保有資格」「他クライアントからの評価」などをチェックしましょう。

個別にメッセージのやりとりやオンライン面談を実施し、人となりを確認するのもいいですね。

なおクラウドソーシングで依頼できる仕事は、基本的には在宅・オンラインで完結する仕事なので、直接会ったり事務所へ来てもらったりする仕事には向いていません。

たとえば、「店舗スタッフ」「事務所の留守番」などがあげられます。

在宅・オンラインでもできる「事務」「クリエイティブ」「IT」などの仕事を任せたいなら、クラウドソーシングの利用を検討しましょう。

なお多ジャンルの仕事が依頼できる総合型クラウドソーシングのひとつに「Craudia(クラウディア)」があります。

Craudiaの登録者数は月間1,000人以上(※1)なので、希望に合うフリーランスが見つかる可能性も高いです。

登録は無料なので、気になる方は利用を検討してみてください。

【公式】https://www.craudia.com/

オンラインアシスタントを使う

アルバイトの代わりにオンラインアシスタントを使う方法もあります。

オンラインアシスタントは、在宅・オンラインで業務サポートを行ってくれるからですね。

サービスによってカバーしている業務範囲は異なりますが、事務系からクリエイティブ・IT系まで、さまざまな業務を外注可能です。

クラウドソーシングとの違いは、フリーランス個人ではなく「アシスタントスタッフを管理する会社」と契約します。

組織力のある会社と契約するので、他のスタッフがカバーしてくれる点でも安心感があります。

たとえば、1人のアシスタントスタッフが体調不良・家庭の事情などで稼働できなくない場合、別の方が対応することでカバーしてくれたりですね。

またスタッフの採用基準を厳しくしている会社を選べば、スタッフのスキルが担保されるのもメリットといえるでしょう。

一方で以下のようなデメリットもあります。

  • 月額制で月単位の稼働時間が決まっている会社が多い
  • 最低契約期間が決まっている会社もある

つまり「頼みたい業務の種類・ボリュームが多い」「長期的に任せたい仕事がある」という場合には、オンラインアシスタントがおすすめです。

一方「確定申告前に経理関係書類を会計ソフトに入力してほしい」など、スポット業務だけを依頼したいなら、クラウドソーシングのほうが向いているでしょう。

家族に協力してもらう

家族が空いている時間に協力してもらうのもひとつの方法です。

家族なら協力してもらいたいときだけお願いできて、指導にあたり気兼ねもいらないからですね。

報酬も相場より安く抑えられるでしょう。

ただし「家族に任せたい業務の適性があるのか」「家族の厚意に甘え、過度な負担をかけていないか」には注意しましょう。

また家族へ支払った報酬を経費にするためには、雇用や外注契約の手続きが必要です。

業務をサポートしてくれる家族はありがたい存在ですが、甘え過ぎたり必要な手続きをおろそかにしないように注意していきましょう。

個人事業主がアルバイトを雇う際の注意点まとめ

個人事業主がアルバイトを雇う際の注意点についてお話してきましたが、いかがでしたでしょうか。

個人事業主、経営者としてアルバイトを雇った経験がなく、パソコンでできる仕事であればクラウドソーシングから試していくのがおすすめです。

社会保険事務所や労働局への手続き不要で、即日から仕事依頼できるからです。

さらにクラウドソーシングで色々な業務を外注依頼していく中で、なにかトラブルがあったとしても、以下の理由から大きな問題には発展しにくいと考えられます。

  • 直接の雇用関係を結んでいない
  • トラブル時には運営会社がサポートしてくれる

人を雇ったり仕事を任せることになにかしらの不安がある場合、まずはクラウドソーシングから試してみてはいかがでしょうか。

月間新規会員登録1,000人以上(※1)!日本最大級のクラウドソーシング「クラウディア」
業界最低水準の手数料(最低3%)なことから月間1,000人以上が新規会員登録しているクラウドソーシング。完全非公開の高単価オファーや仮払いシステムで報酬の受け取りも安心。
※1) 2022年6月時点、当社調べ

関連記事

フリーランスに契約書は必要?おすすめのテンプレートも紹介

インボイス制度によるフリーランス(個人事業主)への影響は?導入までに行うべき対策について解説

正社員を雇う際にかかる費用はどれくらい?必要手続きや注意点を解説

意外と知らない?有給休暇のしくみについて