「本業の給料だけでは生活が厳しい」「残業が減ったことで暇な時間ができた」などの理由から、ダブルワークをしようと考えている人も多いと思います。
しかし、ダブルワークを始めるとなると、健康保険や厚生年金保険などの社会保険について以下のような疑問が生まれるのではないでしょうか。
- 片方だけ加入すればいいの?
- 加入する条件は?
- そもそも加入しないとダメなの?
- 副業が会社にバレない?
そこで今回は、ダブルワークをする際に気になる社会保険の加入条件・注意点についてまとめてみました。
ダブルワークの場合、社会保険はどうなる?両方で加入が必要?
2つの仕事をしている場合、社会保険はどちらに入るのか、それとも両方入るのか気になる人も多いと思います。
結論から言えば、『加入条件を満たしていれば』ダブルワークをしている両方の職場で社会保険に加入する必要があります。
(※加入条件については後述します)
条件を満たす場合、社会保険への加入は、事業主や労働者の意思に関係なく強制適用されると法律で定められているからです。(※参考⇒厚生労働省公式サイト)
一方が正社員、もう一方がアルバイトだとしても、両方の職場で条件を満たしていれば、それぞれの職場で加入手続きが必要となります。
加入すると、社会保険料は両方の給料の合計額から給与の割合で算出され、それぞれの給料から天引きされます。
どの会社の健康保険証を持つかは自分で決められる
両方の社会保険に加入するとなると、「健康保険証はどうなるの?2枚必要なの?」と疑問に思いますよね。
結論から言うと、健康保険証が2枚必要になることはありません。
2つの社会保険に加入することになった場合は、どちらの仕事をメインとするかをあなた自身が決めることができ、健康保険証はメインの会社から発行されます。
ダブルワークをする際の社会保険の手続きは自分で行う
ダブルワークをする際は、社会保険への加入手続きを自分自身で行う必要があります。
面倒に感じるかもしれませんが自分でするのは最初の加入手続きだけです。その後の社会保険関係の手続きは全てメインにした会社が行ってくれます。
手続き方法は下記の通りです。
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加入条件を満たした日から10日以内に「健康保険・厚生年金保険被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を年金事務所へ提出する。
提出方法は、郵送・窓口持参・電子申請の3つあります。申請書は日本年金機構のサイトからダウンロードできます。
ダブルワークをしている人が社会保険に加入する条件
前述した通り、勤務先が1つであっても2つであっても、条件を満たす場合は社会保険に加入しなければなりません。
社会保険の加入条件は以下の通りです。
- 社会保険の加入義務がある職場で働いている
- 健康保険は75歳未満、厚生年金保険は70歳未満
- 1週間の所定労働時間および1ヶ月の所定労働日数が一般社員の4分の3以上
- 常用的使用関係がある
さらに、平成28年10月からは、下記全ての条件に当てはまれば加入対象となりました。
- 週の労働時間が20時間以上
- 月給88,000円(年収106万円)以上
- 1年以上継続して雇われている、または雇われる見込みがある
- 学生以外
- 従業員が501人以上(平成29年4月から500人以下でも会社と労働者が合意すれば社会保険に加入可)
加入条件は、それぞれの会社で上記5つを満たす必要があります。複数の会社を合算して条件を満たしても、加入対象とはなりません。
扶養内で働きたい主婦がダブルワークをする際の注意点
- 家計の不足分を補いたい
- 将来のための貯蓄をしたい
- 子どもの教育費を稼ぎたい
上記のような理由でパートをかけもちしてダブルワークをしたいと考えている主婦の方も多いと思います。
しかし、もしも扶養内で働きたい場合は注意が必要です。
ダブルワークをして収入が増えれば社会保険に加入できる可能性がありますが、社会保険に入るということは、つまり扶養から外れることだからです。
年収106万円以上だと社会保険に加入しなくてはならない場合がある
ダブルワークを合算した年収が106万円以上(月収88,000円以上)ある方は、社会保険に加入し、夫の扶養から外れる可能性があります。
社会保険の加入条件の2番に当てはまるからです。
- 週の労働時間が20時間以上
- 月給88,000円(年収106万円)以上
- 1年以上継続して雇われている、または雇われる見込みがある
- 学生以外
- 従業員が501人以上(平成29年4月から500人以下でも会社と労働者が合意すれば社会保険に加入可)
もし、扶養から外れて自分自身で社会保険に加入した場合、収入の約14%が社会保険料として引かれることに加え、住民税や所得税も引かれるため、年収125万円以上働かなければ手取りが減る可能性が高くなります。
ただし、加入条件が「全て」当てはまることが条件なので、1つでも当てはまらなければ、扶養から外れることはありません。
社会保険に加入せずに働きたい方は、条件を満たさないように注意してください。
年収130万円以上だと社会保険上の扶養から外される
ダブルワークを合算した年収が130万円(月収10万8,334円)以上ある方は「130万円の壁」に注意が必要です。
なぜなら、社会保険の加入条件に当てはまらなくても、130万円以上の年収があれば社会保険上の扶養から外れてしまうからです。
例えば、従業員数が500人以下の会社で働いている場合、加入条件を満たさないため会社の社会保険には入れません。
しかし、年収が130万円以上だと夫の社会保険の扶養からは外れるため、自分自身で「国民健康保険」「国民年金」に加入しなければいけなくなります。
社会保険は保険料の半分を会社が支払ってくれますが、国民健康保険、国民年金の保険料は全額自己負担です。
さら、住民税と所得税の支払いもあるため、180万円以上稼がなければ手取りが減ってしまいます。
180万円以上働くのが難しい方は、年収を130万円未満に抑えましょう。
ダブルワークで社会保険に加入するメリット
将来支給される年金が増える
一番のメリットは、将来もらえる年金額が増えることです。
社会保険に加入すると、基礎年金(国民年金)に加えて厚生年金が上積みされ、その分受給額が増えるからです。
厚生年金は加入している期間が長いほど年金受給額が増えます。
もしダブルワークをやめて仕事を一つにするとしても、社会保険に加入できる職場を選ぶと良いでしょう。
国民健康保険にはない給付がある
社会保険の健康保険に加入すると、下記のような国民健康保険にない給付を受けることができます。
- ケガや病気で仕事を長期間休むことになったときの「傷病手当金」
- 出産のために仕事を休んだときにの「出産手当金」
「傷病手当金」や「出産手当金」の支給額は、休む前に支給されていた給与の2/3ほどです。働けない期間にも収入があるのは助かりますよね。
その他、人間ドックを受ける際には補助金が出るなどの制度があり、手厚い補助を受けることができます。
ダブルワークで社会保険に加入するデメリット
副業が会社にバレる
ダブルワークをしているどちらの会社の社会保険にも加入している場合は、会社にバレてしまいます。
なぜなら、「健康保険・厚生年金保険被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」をそれぞれの会社経由で保険者へ提出しなければならないからです。
働き方改革により、政府は副業や兼業を促進する考えを示していますが、実際のところ、7割以上の企業はダブルワークを認めていないという調査結果もあります。
副業を認めていない会社の場合、ダブルワークがバレれば注意勧告、またはそれ以上の処分が行われるケースもあります。
ダブルワークをする前に、会社の就業規則を必ず確認しましょう。
手取り額が減る
社会保険料が引かれるため、手取り額が減ります。
両方の職場で社会保険に加入すると、それぞれの職場の報酬月額を合算した金額を元に社会保険料が算出されるからですね。
例えば、職場Aの報酬月額が20万円、職場Bの報酬月額が10万円だった場合、社会保険料は下記のように算出されます。
=社会保険料(約4.2万円)
つまり、給料天引きにより、社会保険料約4.2万円が引かれてしまいます。
少しでも収入を増やしたい一心でダブルワークをする方が多いですが、収入が増えることで社会保険料も増えてしまいます。
将来的には年金の受給額が増えるメリットがありますが、「今」お金が必要な方にとってはデメリットと言えるでしょう。
まとめ
社会保険は、正社員・パート・アルバイト・派遣社員・クラウドソーシングなどの雇用形態に関わらず、条件を満たせば加入しなければなりません。
そのため、ダブルワーク先の両方で加入条件を満たせば、両方の社会保険に加入することになります。
2つの社会保険に入れば、そのぶん保険料は高くなりますが、将来の年金受給額や各種手当を考えるとメリットは大きいと言えるでしょう。
どちらのダブルワーク先でも、社会保険に加入できない働き方(勤務日数が少ない、勤務時間が少ないなど)をしている方は、どちらか一方に比重を置いて加入条件を満たすことも検討してみてください。
ただし、夫の扶養から外れたくない主婦の方は、扶養内に収まる収入に抑え、社会保険に入らないという選択肢もあります。
それぞれのメリット・デメリットを比較したうえで、自分に合った働き方をしてみてください。
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当記事の記事監修者からのコメント
ダブルワークの場合、2つの会社で社会保険に加入する可能性は労働時間の関係から低いと考えますが、どちらの会社も従業員が501人以上で週20時間以上働くという条件なら、どちらにも加入ということになります。
主婦の方の場合は扶養を外れることで税金がどうなるか?と気にする方は多いのですが、実際問題社会保険の方が家計への影響は大きくなるので注意して下さい。
社会保険に加入するメリット・デメリットをよく考え、家計全体でどうなのかということも考えられるとよいでしょうが、長い目で見れば社会保険に加入するメリットは意外と大きいと思います。
記事監修者(中村真里子氏)の自己紹介
社会保険労務士・ファイナンシャルプランナー(CFP)
家計の管理や社会保険制度の周知、20代の頃からの株式投資経験を基に資産形成のお手伝い(金融商品や保険商品は販売しておりません)をしています。
がんサバイバーでもあり、今後は両親の介護経験から成年後見制度にも力を入れたいと考えています。